大阪の府立高校 特色づくり

 大阪府は平成23年度4月から大阪府在住で大阪府内の私立高校に通う生徒の授業料の無償化を年収610万円未満の世帯にまで拡大。

これにより、生徒の約半数が無償化となっている。また、私学入試は、1月~2月なので、公立の3月入試前に大半の私学入学が決まってしまうこともあるためか、府立高校の定員割れが非常に激しい状況となっています。

 このための対抗策として、府立高校では、いろいろな特色ある学校づくりに努め、何とか生徒募集・生徒数確保につなげようと創意工夫しています。

 たとえば、大阪府大正区の府立泉尾高校でも今春、定員割れ(0.8倍)が起こりました。それで、放課後に小中学校の算数・国語の基礎基本の復習を行い、高校での学習に支障がでないような取組を進めています。また、ゲーム感覚で親しみを持って勉強してもらうために、ニンテンドーDSを120台ほど購入して学習機器として活用しています。

 他にも、西淀川高校(定員の0.51倍)の地域清掃活動を通した地域交流や中学校への出前授業・クラブ交流などの中高一貫教育の模、あるいは、和泉高校(1.33倍)では、TOFELテストで高得点を目ざす「英語超人」学科の創設・一流大学や海外留学を目ざす「グローバルコース」の開設など特色ある高校づくりを強力に推進している姿があります。

 

 でも、私は、いろいろあるが、泉尾高校の取組がいいなと思います。大阪市大正区は私のふるさとですし、昔から教育熱心な土地柄でした。商工業が中心の下町で、昔は鉄工所や木材加工の町工場が多かったです。やはり、庶民的な温かい土地柄を感じます。大正駅を降りて三軒家を通り過ぎて、三泉市場や中泉尾商店街、公設市場を通って、泉尾神社、泉尾高校の辺りまで来ると、自分だけの感覚かも知れませんが、街角の通りすがりの人々の何気ない大阪弁や、昔ながらの慣れ親しんだ商店街の「いらっしゃい!」という、全国どこにでもあるようなかけ声の風景に、懐かしい庶民的な雰囲気を感じます。そういう大正区で、生徒一人ひとりに丁寧に基礎基本を希望者に教え込む泉尾高校の教職員の取組みは素晴らしいと思います。

大阪府の維新の会の教育条例案

これは、正論のように見える裏側で、問題点も多く含んでいる条例案ですが、今回の選挙で民意の選択となりました。1点目に指摘しておきたいことは、校長先生を民間から登用することの功罪ですが、推薦では無くて自薦という人も多数審査対象になってくるので、もし条例案どおりに仮に2~3年ごとに莫大な校長のポストを全部民間人で埋めようとすると、その結果、何も教育の経験や専門家でもない人がいきなり校長になってしまう可能性があります。それでも勤まるのかという疑問がつきまといます。しかし、半面、教職員との間の悪しき労使慣行や派閥人事その他の弊害が取り除かれるのは確実でしょう。その結果、小学校でいえば高学年や1年生などのより責任の重い担任にはベテランの教職員が配置され、初任者や若い教師には担任外や234年の担任があてがわれるというような、世間一般の常識的な校内人事が行われるでしょう。だから、保護者の「担任を替えてくれ」というような要望は起こりにくくなります。そして、2点目は校長の期限を仮に2~3年ぐらいに限って登用するとするならば、そもそも学校は将来のある大事な子どもを預かっているわけですから、1年1年が真剣勝負であり、全く同感で正解だと思います。それでいいと思います。しかし、ここが肝心なのですが、学校の教育改革が進んで成果が上がった場合は、再任を妨げないということも規定しておかないと、校長のなり手がなくなるのではないでしょうか。3点目は、評価育成システムで、2年連続D評価の5%の教員を免職にするという条例ですが、教員に全く向いていない人の転退職を促すこと自体は間違ってはいないでしょうが、学校は、実際は何も正教員だけで構成されているわけではないのです。講師、臨時講師、特別嘱託員、若年特別嘱託員、時間講師など、最近は多くの職種の教員が配置されていて、これらの教員は、評価育成システムの対象から除外されています。これらの職種の教員をも指導助言または指揮監督するのが、主任、主席、教頭、校長ですが、正教員だけの評価育成システムをいくら厳正に行ったとしても、残りの殆ど学校運営に責任を持たせない、あるいは持たないままの、こういった多くの職種の教員の協力が得られないような学校運営では、到底、教育改革は進みません。つまり、正教員個人の評価は非常に大切ですが、教職員全体のチームワークも大切なのです。一般の会社でも、正社員が昇任テストを受けて合格して主任になっても、大多数のアルバイトや嘱託員が協力しないで勝手なことをしているような職場では、ノイローゼになって休職や配置転換になるケースがよくあります。こういった問題は、最近どの職場でも普通によくある問題であり、企業にとっても非常に人事管理で対策を講じるべき大きい問題になってきていますので、この条例案では、おそらく欠落した部分であり、非正規社員が多数を占める学校現場や一般の民間の職場の中間管理職の苦しい悩みの状況を、あまり考慮に入れていないのではないかと危惧します。一般に、しんどいのに給料がさほど上がらない名ばかり管理職にはなりたくない・・・という若い人たちが、非常に増えてきている現状ですので、教育界も一般企業も早急な対策が望まれます。

具体には、大阪府では、副校長(教頭)の立場を権限強化して、今年度から評価育成システムでの第一次評価者にして負担を重くしたので、待遇面では少しは優遇するようにして、また校長の任期を機械的に2~3年にせず、成果ある場合は再任を妨げないように規定すべきです。校長・教頭を民間人から登用しても、必ず期限付きで退任させるような施策の条例案のままでは、「働けど働けど、わが職場改革ままならず、苦しきことのみ多かりき、じっと手を見る」という、校長の嘆きが聞こえてきそうです。朝日新聞によりますと、大阪府の校長、教頭試験の受験志願者が年々歳々減ってきて、降任希望も出ていますので、教員の管理職になりたくないという責任回避型の思考が強過ぎます。まあ、譬えて言えば「モラトリアム人間」の教師が多過ぎますので、本体あるべき姿ではないのですが、外部人材の登用は「維新の会」の公約として、大阪府としても強力に推し進めても仕方の無い施策であると思います。しかし、長期的展望に立てば、ここはひとつ、子どもたちの未来のために粉骨砕身がんばろうという教員が管理職になろうという気概を持てるような施策も同時に併せて進めることが望まれます。